やさしいビタミンCの知識

植物は,どうしてビタミンCをたくさん含んでいるの?

ビタミンC(アスコルビン酸)を作れない私たちにとって,野菜や果実など植物は大切なビタミンCの供給源です.植物のビタミンCは,一般的に根菜類よりも葉茎菜類に多く含まれています.なぜ根ではなく,葉に多いのでしょうか?その理由のひとつは光合成です.光合成は,光エネルギーを利用して水を分解し,化学エネルギーに変換することで二酸化炭素を糖に変える反応ですが,この反応の際,副産物の酸素が還元されて活性酸素種がたくさん発生します.活性酸素種による細胞成分の酸化は,植物にとっても枯れるなど重大な障害になります.そこで植物の葉は,抗酸化物質としてたくさんのビタミンCを合成し,蓄積する能力を獲得しました.さらに植物は,ビタミンCを使って活性酸素種のひとつ過酸化水素を特異的に還元して無毒化する独自の酵素(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)も獲得することで,光合成をしながら効率的に活性酸素種を消去できるシステムを発達させています.葉っぱが日焼けしない理由も,水溶性で多量に含まれるビタミンCをはじめ,脂溶性のビタミンEやカロテノイド,ポリフェノールなどの抗酸化物質により活性酸素種を消去する能力が高いからです.ちなみに葉では,光が当たると葉緑体からシグナルが発信されてビタミンCの合成能力が活性化されるため,日陰の植物よりも日向の植物の方がよりたくさんのビタミンCを含んでいます.ある電機メーカーは冷蔵庫の野菜室にLEDライトを付けることで,葉茎菜類のビタミンCを長く保てるように工夫していますが,これはとても理に適っています.

[石川 孝博]