やさしいビタミンCの知識

ビタミンCは尿酸値を下げることができるのか?

先に結論を述べます.ビタミンCには尿酸値を下げる作用があると言ってよいでしょう.

尿酸は,水に溶けにくいため濃度が高くなりすぎてからだの中で結晶ができてしまうと,痛風発作を引き起こします.また,尿酸はビタミンCと同じように抗酸化作用が強い生体内化合物です.ヒトやサルは,抗酸化作用のあるビタミンCをからだの中で作り出せない代わりに,尿酸値が高くなるようになったとも考えられています.ですから,痛風は,ビタミンCを作る能力を失ったヒトを守るための代償と言えるのかもしれません.

さて,これまでに血清尿酸値とビタミンCに関して,いくつもの研究がなされてきました.横断研究注1では,血中のビタミンC濃度が高い,あるいはビタミンC摂取量が多いと尿酸値は低いということが観察されています.前向き研究注2では,ビタミンC摂取量が多いとその後の痛風発症リスクは低いということが示されています.

それでは,本当にビタミンCを積極的に摂ることで尿酸値を下げることができるのでしょうか.2011年に報告されたメタアナリシス研究注3では,ビタミンCを1日あたり200~2,000 mg(中央値500 mg)摂取することで血中の尿酸値が減少するという解析結果が得られています.さらに,2021年に報告されたメタアナリシス研究注3でも,ビタミンCを経口補給することで血清尿酸値を減少させる効果があることが示されました.したがって,「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」では,ビタミンCを積極的に摂ることによる尿酸値低下のエビデンスレベルを「B」注4と評価しています.


注1 横断研究とは,ある集団のある一時点での疾病(健康障害)の有無と要因の保有状況を同時に調査し,関連を明らかにする方法.

注2 前向き研究とは,あらかじめ定義された集団から容疑要因があるものとないものを選び,将来に向かって問題とする疾病の発生を観察して,両者の発生率を比較する方法で,コホート研究(Cohort Study)あるいは追跡研究(follow-up study)ともいう.

注3 メタアナリシス研究とは,過去に独立して行われた信頼できる複数の臨床研究のデータを収集・統合し,統計的方法を用いて解析した研究のこと.ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは,根拠に基づく医療(EBM))において,最も質の高い根拠とされています.

注4 エビデンスレベルB:エビデンスがあり,推奨内容を日常診察で実践するよう推奨する.


参考文献:
Arthritis Care Res. 2011, 63(9): 1295-1306.
Complement Ther Med 2021, 60: 102761.
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版.診断と治療社(2018)

[山本憲朗]