やさしいビタミンCの知識

安定型ビタミンC誘導体って? 何に使えるの?

ビタミンC(L-アスコルビン酸)は,コラーゲン合成促進作用をはじめ体内での多様な生理作用にかかわっているため,1日あたりの摂取推奨量は13種類のビタミンの中で最も多いのです.これらの生理作用の多くには,ビタミンC分子が還元性の強い物質であることが関係しており,言い換えれば強い抗酸化能力をもつといえます.しかし,よく知られているように,ビタミンCは熱,光,金属,空気(酸素)などに触れると壊れやすく,さらに中性の水に溶けると不安定ですみやかに分解します.つまり,ビタミンCはその化学構造から酸素などが存在すると酸化分解を受け,その結果,抗酸化能力を失って本来のビタミンC活性を発揮できないということになります.ですから,常に体内に十分量のビタミンCを供給し続けることが必要なのです.

各種の食品(加工食品,ビタミン飲料,サプリメントなど)や化粧品などにビタミンCが多く含まれていますが,その不安定性から製造過程や製品保管中にビタミンCが分解減少することや製品中のタンパク質やアミノ酸などと反応して匂いや着色の原因になることが指摘されています.これらの問題を解決するために,ビタミンCの不安定な構造を酵素技術や化学的処理で安定化し,直接には還元性を示さない性質を持つ“安定型ビタミンC誘導体”が作られました.この物質は,ビタミンCと違って種々の酸化的条件下でも安定ですが,生体内に摂取されるとビタミンCと同じ働きを発揮するのです.

現代生活の中では多くのビタミンC誘導体が使われるようになっていますが,“安定型ビタミンC誘導体”と言われるものには,食品ではL-アスコルビン酸2-グルコシド,また化粧品ではアスコルビルグルコシド(L-アスコルビン酸2-グルコシドと同一物質)とリン酸アスコルビルMgのみが添加物に指定認可されています.いずれの物質ともに,ビタミンC構造の中で還元性に関わる部位をグルコース(ブドウ糖)やリン酸基で保護することで安定化されており,摂取後に体内の酵素などの作用でビタミンCが切り出され吸収されて働くのです.つまり,“安定型ビタミンC誘導体”は,多様化した商品開発に対応して広い応用範囲と加工特性をもち,一般的な食品はもとより長期保存食などへの用途も可能なビタミンC供給源として使用されます.

[武藤 徳男]